note連載「プルーフ・ブランディング(Proof over Promise.)」第10回を公開。Phase
基礎篇の折り返し総括回として、私が名づけた造語「ジツ消費」を軸に、いまの生活者がブランドの何を見ているのかを書きました。
AI時代、言葉が安くなった
AIに頼めば、どんなに立派な言葉でも、いまや一瞬で返ってきます。ブランドの約束も、理念も、謳い文句も。それらしいものは、いくらでも出てきます。
2025年、アメリカの辞書 Merriam-Webster が、その年を象徴する言葉に「slop」を選んです。AIが大量に吐き出す、中身の薄いコンテンツという意味です。言葉は、安く、軽く、無限になりました。
生活者は何を見ているのか
では、それを受け取る側──生活者は、いま、何を見ているのでしょう。答えは、はっきりしています。言葉ではなく、その後ろにあるものを見ています。
消費者庁の調査では、7割の人が「クチコミ評価の高い商品を選ぶ」と答えました。作り手の説明より第三者のレビューを重視する人も、3分の1を超える。Omnisendの2026年1月の調査では、86%が「AIが薦める商品」に懸念を抱く一方、84%が「人のレビュー」を信頼しているという結果も出ています。2023年には、広告であることを隠す「ステマ」が日本でも法律で規制された。
立派な言葉(Promise)は、もう、それだけでは信用されありません。

「ジツ消費」という新しい物差し
私はこれを「ジツ消費」と呼んでいます。こんな言葉は、まです、世の中にありません。マーケティングの教科書にも、辞書にも、載っていありません。私が、今回の連載のために名づけた造語です。
モノ消費、コト消費、イミ消費……その次に来るものとして、私が勝手に置いてみた、生活者の新しい物差し。「実(じつ)=本当にやっていること」を見る消費。それが、ジツ消費です。
2500年の歴史が示す同じ答え
この連載で、ずいぶん遠回りをしてきた。アリストテレス・孔子・渋沢栄一・二宮尊徳・中世の商人・武士……2500年、場所も時代もバラバラなのに、全員が同じことを言っていました。言葉より、その後ろにある「やったこと」が、信頼をつきます。
AIが言葉を無限に量産するいま、私たちはこの古くて新しい物差しを、もう一度手に取り直しているだけです。ジツ消費は、新しい流行ではありません。人類がずっと持っていた基準への、回帰です。
ブランディングとは「実」を見つける仕事
ブランドの仕事を頼まれて、私が最初にやるのは、立派なコピーを考えることではありません。そのブランドがこれまで本当に何をやってきたか、これから何をやろうとしているか、を徹底的に聞き出すことです。きれいな言葉は後からいくらでもつくれます。でも後ろに「実」がなければ、いまの生活者に一秒で見抜かれる。
ブランディングとは、言葉を盛る仕事ではありません。そのブランドの「実」を見つけて、いちばん伝わる形にする仕事です。
月曜の朝、ひとつ確かめてほしい。あなたのブランドがいま世に出している言葉──その後ろに「実」はあるか。あるなら隠さず見せればいい。まだ薄いなら、言葉を盛るより先に、実を積むことです。順番はいつだって、そっちが先です。
来週は Phase「プルーフ・ブランディング(Proof over Promise.)」へ。実(じつ)の「積み方」を書きます。
毎週月曜、朝7時。
プルーフ・ブランディング──約束より、証(あかし)を。


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