「言いたいこと」と「伝わること」は、なぜズレるのか|Proof over Promise

Aloha Branding 代表の長澤宏樹です。

本日、思想書連載「プルーフ・ブランディング(Proof over Promise. ── 約束より、証(あかし)を。)」の第15本を note で公開しました。


一文で言おうとすると、なぜか、長くなる

試しに、一文で言ってみてほしい。あなたの会社が、いちばん伝えたいこと。

なぜか、長くなる。修飾語が増える。二文になる。相手の顔を見て、慌てて言葉を足してしまう。

その”足りていない感じ”こそが、もうズレている証拠だ。


出題者には、聞こえている

1990年、スタンフォード大学の大学院生だったエリザベス・ニュートンが、ある実験をした。二人一組にする。出題者は、有名な曲(「ハッピーバースデー」等)を選び、指でテーブルを叩いてリズムだけで伝える。回答者は、そのリズムだけを頼りに、曲名を当てる。

出題者には、はっきり聞こえている。頭の中では、メロディも、歌詞も、伴奏までもが鳴っている。だから叩く前、出題者たちは予想した。半分くらいは、当ててもらえるだろう。

結果。120曲中、回答者が当てられたのは、わずか3曲。

出題者には全部鳴っていた音が、回答者には、ただの「トン、トン」でしかなかった。

1989年、経済学者のキャメラー、ローウェンスタイン、ウェーバーは、この現象を「知識の呪い(curse of knowledge)」と名づけた。自分が知っていることを、相手も同じくらい分かっているはずだと、無意識に思い込んでしまう。

話し手の頭の中では、伝えたいことは、ひとつながりの全体像として鳴っている。だが言葉にした瞬間、それは聞き手には、切れ切れの「トン、トン」に変わる。

「言いたいこと」と「伝わること」がズレるのは、熱意の不足でも、能力の不足でもない。人間が、そもそもそう出来ているだけだ。


「らしさ」は、外には聞こえていない

ブランディングやコンセプトをつくる現場で、よく言われることがある。「我が社の”らしさ”を、もっと強調してほしい」「このブランドの”らしさ”をもっと伝わるようにしてほしい」。

だが、その「らしさ」自体が、外部の人間にはまったく伝わっていない。そう感じる場面が多い。

無理もない。「らしさ」は、当人にとってきわめて主観的な感覚で、そもそも言語化ができていないからだ。

さらに、もう一段ややこしいことが重なる。日本語の感覚を、英語のマーケティング用語に乗せて語ろうとした瞬間、その言葉が本来持っていた雰囲気や手触りは、たいてい、ごまかされる。「らしさ」も、その一つだ。

これは、テーブルを叩く出題者と、まったく同じ構造だ。頭の中では、確かに鳴っている。だが、それを「トン、トン」以上の形にする作業を、誰もしていない。


まず、一つに絞ってみる

全部を言おうとするほど、伝わらなくなる。

強い実績を訴えるとき、数字を並べるほど印象は薄まる。一番効くものを一つだけ選んだほうが、届く。同じことが、「言いたいこと」にも言える。

出題者が、回答者に音を届けたいなら、曲全部を叩こうとしないことだ。いちばん伝わる、ワンフレーズだけを、はっきり叩く。

あなたの会社が伝えたいことも、まず、一つに絞ってみてほしい。


あなたのブランドは、ちゃんと「伝わって」いますか。「伝えているのに、伝わっていない」と感じるなら、その理由を、一緒に見つけます。

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HIROKI NAGASAWA

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