いいものほど、なぜ「伝わらない」のか|Proof over Promise

Aloha Branding 代表の長澤宏樹です。

本日、思想書連載「プルーフ・ブランディング(Proof over Promise. ── 約束より、証(あかし)を。)」の第14本を note で公開しました。


いいものをつくっているのに、なぜか、伝わらない。

いいものをつくっている。商品にも、サービスにも、自信がある。発信もしている。言葉も、尽くしている。それなのに、なぜか伝わらない。相手の顔が、ぴんと来ていない。

そういう会社は、実は多い。むしろ、いいものをつくっている会社ほど、ここでつまずいている傾向にある。

問題は、たいてい「中身が足りないこと」ではない。中身は、もうある。ただ、伝わる形に、訳せていないだけだ。


なぜ、いいものほど、伝わらないのか。

つくり手には、こだわりがある。素材、工程、細部。語りたいことが、山ほどある。だが、情報量が多いほど、いちばん伝えたいことは、埋もれていく。言いたいことが2つあるだけで、受け取る側は、迷子になる。

もうひとつ。つくり手は、つくり手の言葉で、話してしまう。業界の中では通じることばが、外では、通じない。相手の靴をはいていない言葉は、素通りされる。

伝わらない原因は、熱意の不足でも、中身の不足でもない。訳されていない。それだけだ。


人類は、訳し直すことで、伝えてきた。

これは、新しい問題ではない。人は昔から、「そのままでは伝わらない」ことと、戦ってきた。仏教は、天竺の経典を、鳩摩羅什(くまらじゅう)が意味の通る漢語に訳し直して、中国に根づいた。聖書は、ルターが生きたドイツ語に訳して、民衆に広がった。イタリアには「翻訳は、裏切り(traduttore, traditore)」という言葉すらある。逐語に忠実なほど、いちばん伝えたいことが、死ぬからだ。だから訳者は、言葉を替えてでも、核を生かす。「伝える」と「伝わる」は、別のことだ。


私は、そのことを、九歳で思い知った。

小学3年で、日本人が一人もいない、アメリカの現地校に、飛び込んだ。言葉を覚える力が、まだ柔らかい歳。それでも、容易ではなかった。トイレに行きたくても、言い方が、わからない。辞書を、いちいち引きながらの、会話の日々。おかげで、辞書を引く速さだけは、身についた。

あのとき、身をもって知った。伝えたいことがあっても、伝える方法を知らなければ、伝わらない。そして、言葉を覚え、文化を覚え、相手の靴をはくまで、心は、通わない。

その後、博報堂DYグループで13年。ホームページ、ブログ、検索、SNSと、メディアの主役が入れ替わるたび、企業の「いちばんいい見せ方」を、訳し直す仕事をしてきた。独立してからも、国内外200を超える企業と商品のブランドで、やってきたことは同じだ。本質を捉え、いちばん伝わる形に、訳し直す。──私が「超翻訳」と呼ぶようになったこの営みは、九歳の、あの無力さから、必要に迫られて生まれている。


まず、「いちばん伝えたいこと」を、一文にしてみる。

むずかしいことは、しなくていい。

あなたの会社が「いちばん伝えたいこと」を、社外の人に、一文で言ってみてほしい。全部は、言わなくていい。一文だけ、だ。すらすら言えるだろうか。相手は、きょとんとしないだろうか。

きょとんとされたら、それでいい。そここそが、本当の出発点だ。伝えたいことは、そのままの形では、伝わらない。まず、訳し直すべき一文を、見つけるところから。


あなたのブランドは、ちゃんと「伝わって」いますか。「伝えているのに、伝わっていない」と感じるなら、その理由を、一緒に見つけます。

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HIROKI NAGASAWA

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