本日、連載「超翻訳 ── 伝えたいを、伝わるカタチに。」の第23本を note で公開しました。

社内の一言は 社外では通じない
社内なら、ひとことで通じる話であっても、取引先や面接に来た学生が相手になると、これがなかなか伝わらない。
こういうことって、ないですか。
相手を入れ替えたら 説明に4倍かかった
心理学者のハーバート・クラークらが、1986年に報告した実験がある。
二人一組。あいだについたてを立てる。顔は見えない。
A(伝える側)の手元には、図形を描いた紙が決まった順に並んでいる。
B(聞き手)の手元には、同じ紙がばらばらに置いてある。
Aが言葉だけで説明して、Bが同じ順に並べる。
どの図形も、何に見えるかが人によって違うので伝えるのには時間がかかる。
これを同じ相手と6回くり返す。
最初の回、Aは図形の内容を以下のように丁寧に説明している。
「次のは、アイススケートをしている人みたいなやつ。ただし両腕を前に突き出している」
実験の回を重ねていくうちにAは6回目には、こう説明していた。
「アイススケーター」
図形ひとつに使う言葉は、平均で41語から8語まで減った。それでも並べ間違いは、ほとんど出ていない。
さらに研究は続く。同じようにやり取りをくり返したあとで、B(聞き手)だけを入れ替える。新しいBは、それまでのやりとりを聞いていない。
同じAが、同じ図形を説明する。なのに、Bが並べ終わるまでに、Bが入れ替わる前に比べ4倍の時間がかかった。
短くなった言葉は、一緒に短くした相手にしか通じないことが証明された実験だった。
実験の詳細(1986年・Cognition誌)
追跡研究の詳細(1992年・PDF)
長年の伴走先では 最初の説明をしない
私も、Aと同じことをしている。
クリエイティブディレクターという仕事柄、長年、クライアント企業と伴走しながら、一緒になって企業のコミュニケーション設計を行うことが多い。
長年伴走しながら仕事をしているから、打ち合わせでは、お互い細かい説明を省く。それでもしっかりと話が通じてしまう。
言葉が短くなると、話は速く進む。効率的だ。
しかし、気をつけないといけないのは、そのままのノリで、社外にむけた言葉を設計しないことだ。常に、外の人目線で、会社が伝えたいことが直感的に理解しやすいかを俯瞰する必要がある。
実験でもあった通り、社内で作った言葉は、外ではどれだけ説明しても理解されにくい。
理解してもらうのに4倍は労力が必要だということを肝に銘じておく必要がある。
社員のコメントを 4倍の長さに書き足す
では、社内の人間の言葉を社外に出すときは、どうすればよいか?
ここからは実際、あなたの会社の文書を例にとって見比べてみてほしい。
自社の社内報や採用ページから、社員のコメントをひとつ選んでみよう。
たとえばこんな一文があるかもしれない。
「新しい仕組みの立ち上げを担当しました。大変でしたが、みんなで乗り越えました」。
社内の人なら、「どの仕組み」のことで、「何が大変だったのか」、書いていなくてもわかる。
しかし、社外の人にとっては、どうだろう?
「新しい仕組み」も「何が大変だったのか」、どちらも全く伝わらない。
圧倒的に、伝えるための努力に欠けていると言える。
すこし面倒ではあるが、それを4倍の長さに書き足してみてほしい。
足すのは、社内ならわざわざ言う必要のない、コンテキスト(文脈)の部分の説明だ。
その人の部署が何をしているところか。
その人がそこで実際に何をしたか。何が大変だったのか。
長すぎた場合は、あとからいくらでも削ることができる。
まずは、4倍を目安に説明をふやしてみよう。
それで初めて、一通り伝わるものになるわけだ。
社内で8語になった言葉は、外に出すとき、もう一度41語から始める必要がある。
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連載「超翻訳 ── 伝えたいを、伝わるカタチに。」/毎週月曜、朝7時更新
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