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萩原浩の「神様からひと言」を読みました。

萩原浩作品好きです。
気持ちが温かいですよね。

 

萩原浩の「神様からひと言」

萩原浩の「神様からひと言」

 

「オロロ畑でつかまえて」を読んで(参照:過去BOOKLOG)、作者が広告制作会社のコピーラーター出身という背景もあり、いっきにファンになってしまいました。

今回手にした「神様からひと言」でも、広告的な背景や企画プレゼンといった馴染み深いの要素が作品に鏤められていて、思わず「あるある」と共感してしまいます。また苦悩するサラリーマンをユーモアを交えながら描いている俯瞰した人間に対する温かさも感じ取れることができます。お客様相談窓口としての特殊部隊的な設定はリアリティが若干欠けてしまうものの、これを含めて映像化することで、ごくごく一般的な視点でだれでも楽しめる作品になるのだろうなー、とも思いました。

 

かなり断片的になりますが(ストーリーの全体像はあえて描かないように)、気になったフレーズを記しておきます。

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで
興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

「いまの彼の話で、僕が特に興味を惹かれたのは、三つだ」

政彰が一同に指を突き出してみせ、一本ずつ折りはじめた。

「一つ、ネーミングは商品と企業の思想、姿勢を具現化するメッセージでなくてはならない。二つ、ネーミングは時代の言葉であり、社会性、時代性を含んでいることが必要。三つ、誰もが買う商品のネーミングには誰にもわかりやすく簡潔なものでなくてはならない −うん、いい提言だ」

凉平はひそかにテーブルの下でガッツポーズをした。

 
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「どうかな。三文字にしてみた。僕も僕なりに勉強したんだ。ネーミングって三文字がベストなんだろう」

政彰が凉平に向けて、今のもウインクをしそうな微笑みを投げかけている。

「いえ、それは・・・」

ケース・バイ・ケースだ。一概に言えない。凉平が口ごもっているうちに政彰の視線は全員の顔へ戻ってしまった。

「言葉の中に濁音や半濁音があるといいそうだ。唇と唇が触れる発音が日本人好みなんだって言うよ。あとはラ行。これもいいらしい。舌が口の中をくすぐるからね。口唇愛撫だな。みんな愛情が足りないのかなね。そうだ、知ってるかい。ヘビースモーカーになる原因は、小さい時に親の愛情がたりなかったせいらしいよ」

ぽかんと開けた口からヤニで黄ばんだ歯をのぞかせている専務へ横目を走らせて、くすりと笑う。いつしか玉川政彰の独演会になってしまった。

 
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「嫌いなんですよ、肩書きだけで威張っているやつ」

知り合ってまだ四ヶ月なのに、少し年上というだけで高野も凉平に偉そうな説教ばかりする。でも、そういうのは全然嫌じゃない。腹が立つのは、肩書きで人を抑えつけるやつだ。名刺一枚で他人を動かせると信じているやつらだ。

(中略)

「サラリーマンって何なんですかね」

「人のつくねを食いながら、自分の世界にひたるなよ」

「高野さんは、どう思う?」

「そうだなぁ」

高野の滑らかな口舌が初めてためらいを見せた。少しの間、言葉を選んでから、ぽつりと言う。

「よくわかんねぇけど、なんだか会社に人質をとられているみたいな気分になる時はあるな」

 
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「見つけたものは、拾うべきだね」

眼鏡の中のジョンの目がかすかに笑った。凉平の顔の前にひとさし指を突き出してくる。
そしてもうひと言。

「拾ったものは、離さないこと」

 
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「なんか一生懸命働いているのが馬鹿みたいだな。わかなんなくなってきましたよ、会社っていったい何なんでしょう」

答えを期待せずに呟いただけだったのが、篠崎から返事が戻ってきた。

「おでん鍋といっしょだよ」

「え?」

篠崎がお酒のお代わりを注文するついでに、空のコップで目の前のおでん鍋をさした。

「ほら、狭いところでぐつぐつぐつぐつ煮詰まってさ、部長だ課長だ役員だなんて言ったって、しょせん鍋の中で昆布とちくわが、どっちが偉いかなんて言い合っているようなもんだ。考えてみ、このおでん屋じゃ牛スジが一番高くて偉そうだけど、他の食い物屋へ行けば使っちゃもらえない。こんにゃくはここじゃ安物だけど、味噌田楽の店にいけば堂々のエリートだよ」

 

 

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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
*良きインプットが良きアウトプットを作る。

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Link: 萩原浩の「神様からひと言」

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萩原浩の「オロロ畑でつかまえて」を読む

わずか300人の過疎化が進む街の村おこしを、倒産寸前のプロダクションが手がけたら?そんなプロットをユーモアたっぷりで描く作品。

小説の章のタイトルは、広告代理店の人間には馴染み深い言葉がならぶユニークな作りだ。プロローグにはじまり、「1.クライアント」、「2.プロダクション」、「3.エージェンシー」・・・「10.ティザー」、「11.リーチ」、「12.フリークエンシー」などなど。ここだけ読むと、一見、広告代理店の新入社員に向けてまとめられた業界用語集のように映る。しかし、ストーリーはちゃんとこれらの用語とリンクしながら展開していく。このストーリーの組み立て方はちょっと新鮮。

ストーリーの本題とは脱線するのだけど、サイドストーリーとして本書の中で架空のコンドームメーカー(高砂ゴム興行)のコンペがあり、プロダクションが商品のコピーのアイディアブレストを行うシーンがある。その中に出てくる一つの没案でこのようなコピーがある=「二人の間の、0.03ミリ」。

このコピーを読んで、2009年にカンヌを受賞したsalami original 0.02の広告「「LOVE DISTANCE」(当時、GT inc.伊藤直樹が担当)を思い出した。「オロロ畑でつかまえて」は2001年の作品なので、この本を後にメーカー側が意識することで、結果カンヌ受賞に繋がる広告作品ができることになったのか、それとも逆で、メーカーがそもそも昔からこの手のプロモーションを意識してきたものを作家が転がしたのか、どちらが先なのかは定かではない。でも何らかの絡みはありそうだ。(いつの時代も小説は未来を作り出すヒントだと思っているからだ)

)

「LOVE DISTANCE」のカンヌ受賞は、単なる映像美ではなく、制作時に実際恋人達を何日もかけて走らせ、その間もソーシャルを使って拡散した所に大きなクリエイティブチャレンジがあった作品だ。そして、これがあったからこそ、カンヌ受賞に繋がるタグライン=「それでも、愛に距離を」のコピー(とくに「それでも」の部分」)が活きてくる設計となっている訳だ。没案とカンヌ受賞作品の間には、一見似てはいるものの、実は大きな(クリエイティブジャンプの)差があることを思い出した。

Link: 萩原浩の「オロロ畑でつかまえて」

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