Cocktail Short Stories
マンハッタンを仏壇に
「ばあさんが死んだ」
夜中の2時、おやじからの突然の電話だった。
一瞬なんのことかさっぱり分からなかった。夢の続きであってほしかった。
でも、受話器の向こうのトーンが冗談ではないことを語っていた。
つい最近まであんなに元気だったばあちゃん。
歳のわりにハイカラなばあちゃん。
いたずらっ子だった僕と一緒になっていつも笑っていた、ばあちゃん。
若くして死別したじいさんのことを、いつもずっと大切に思い続けていた。
生前に二人で行ったニューヨーク旅行ことは、耳にたこができるくらい聞かされた。
でもその昔話を聞くのは決してきらいではなかった。
話しているうちに、ばあちゃんの顔が乙女の顔に戻っていくのを見るのが好きだった。
ばあちゃんとのお別れのセレモニーが終わった。
悲しかったけど、やっと二人は、また一緒になったんだ。
乾杯しよう。
マンハッタンを二つ。
ばあちゃんとじいさんの再会を祝って、仏壇に二つのカクテルをそっとそえた。
一瞬、遺影の中のばあちゃんの顔が乙女に戻ったように見えた。
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