Book LOG | 喜多嶋隆の「恋とは何か 君は知らない」

 

喜多嶋隆の「恋とは何か 君は知らない」

 

喜多嶋隆の「恋とは何か 君は知らない」を読みました。

 

子供の補習校のバザーで見つけた一冊。

大好きな、喜多嶋隆作品。
あっという間に読み終えてしまい、なんとも言えない切なさが残る。
そのライトな感じがいいですよね。

 

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

ジャズ・ライヴをやっている店にいくというので、少し、いつもよりお洒落をしていた。
まっ白いサブリナ・パンツ。素足に、キャンバス地のデッキ・シューズを履いている。上は、<極楽鳥の花>の柄のアロハ・シャツ。そして、鎌倉の<キッカプー>で買った、ペパーミント色のサマー・セーターを、肩にかけていた。ヘリー・ハンセンの小さなポーチを持っている。
まあ、湘南ローカル・ガールの典型定期なスタイルだろう。

 
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まつ毛が濃い。そして、やや、伏し目がちにしている。
整った顔立ちなのに、全く派手さを感じさせないのは、その、伏し目がちなまなざしのせいかもしれない。

 
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バス・ストップのところは、歩道がけずられて、バスが入れるようになっている。
そこなら、車をずっと駐めておける。夜ふけになれば、バスもやってこない。オーケイ。決めた。
わたしは、ステアリングを右に切った。134号線を、走りはじめた。

 
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手早く、鯵をタタキにした。タタキにした鯵に、刻んだ浅葱とショウガを混ぜ込んだ。
冷凍庫から、ご飯をひとかたまり出す。電子レンジで、解凍する。
熱々になったご飯を、丼に入れる。その上に、鯵のタタキを山盛りにする。
手でちぎったノリをたっぷりとふりかけ、醤油を回しかけた。
それをかきまぜながら、むさぼり食った。ビールを飲みながら、ザクザクとむさぼり食った。

 
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「たとえば、自分でサンドイッチをつくって、プールに持って来るなんて、以前は思いもつかなかったわ」

 
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「用意!スタート!」
わたしたちは、同時にプールの壁を蹴った。クロールで泳ぎはじめた。息つぎのために顔を上げると、並んで泳いでいる由紀子が見えた。かなり速い。わたしと同じぐらいだ。フォームも美しかった。
わたしたちは、ガランとしたプールを2匹の魚のように泳ぎ続けた…。

 
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<時の過ぎゆくままに……>
その最後のフレーズを、彼女は、ゆったりと、繰り返していく……。そして、終わった。
由紀子は、ピアノの蓋を、そっと閉じる。そして、
「ほんの15分、ひとりにしておいてくれる?」
と言った。
「……思いっきり、泣きたいから……」
わたしは、うなずいた。そっと、店を出た。駐車場にある自分の車に歩いて行った。カーラジオをつけ、シートにもたれた。

 

 

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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
*良きインプットが良きアウトプットを作る。

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