Cocktail Short Stories
シンガポールスリングに憧れて
「おい、ハル!元気か?」
受話器の向こうに、テンションの高い声。
一瞬誰だか解らなかった。
そりゃそうだ、日本は4時AM。一番いい眠りの時間じゃないか・・・。
その声は、マー兄だった。
姉貴の元フィアンセ。
今はシンガポールの商社に務めている。
マー兄は、こうしてたまにTELをくれる。
姉貴と別れた後も、俺とは変わらず接してくれる。
マー兄と別れてから姉貴は3年後に結婚した。
それはそれでめでたい話なのだが、俺はマー兄の方が好きだった。
二人にとっては、甘い想い出なのだろうが、俺にとってはいまだにちょっと複雑だ。
こうしてマー兄がちょくちょく連絡してくれることは姉貴には内緒にしている。
「ハル、今度シンガポールに遊びに来いよ。面白いぞ〜」
とマー兄が言う。
マー兄の声を聞きながら、それも悪くないな、とまだ見ぬ景色を想像してみる。
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