Book LOG | 岩井 俊二の「番犬は庭を守る」

 

岩井俊二「番犬は庭を守る」

岩井俊二「番犬は庭を守る」

 

岩井俊二の「番犬は庭を守る」を読みました。

やっぱり岩井俊二はスゴイ!

なんとも奇抜なプロットの中でありながら、やさしい物語を伝える感じ。
読むだけで、岩井俊二にしか表現できないような映像が、しっかりとイメージできてしまう感じ。
他にはだれもマネ出来ないようなこと。

ノックアウトされっぱなしなだけでは悔しいので、いつか一緒に仕事をしたい。

 

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

ああ、つまらない。つまらない。こんなつまらない仕事が他にあるのだろうか。これは拷問だ。究極の時間潰しだ。限られた人生をただ突っ立って過ごすというのはどういうもんだろう。人間というのは動いてこそ人間だ。動かなければ意味がない。俺は人間だ。生物学的にいえば動物だ。植物ではない。動かなくなった人間を人は植物人間と呼ぶ。脳死状態。脳死は果たして人間の死なのか?ウマソーはヤケになって頭の中で思考を巡らせる。言葉を繰り返す。言葉と思考の循環。断じて途切らせてはいけない。途端に退屈がやって来る。そして睡魔が。

 
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なんだよ。あんた「タネ屋」か。
オーブは如何にも不快そうな声で言った。男は鞄からカタログを取り出す。
今一番人気なのがこれだ!「アインシュタインA25K」

 
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ヤツらは避難区域にしか住めないんですよ。
あなたもそうなの?
ウチは避難区域ではないですが、管理区域です。
避難区域なんて殺風景で誰も住んでいないと思ってたわ。
昔の話ですよ。
放射能は大丈夫なの?
放射能が大丈夫なわけないですよ。他に暮らせる場所がないんです。

 
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セレブたちは金に物を言わせて臓器移植を幾度も繰り返すという。臓器移植とは彼女たちの間では、整形手術とはなんら変わらないファッションのひとつなのだ。若い女性向け雑誌のアンケートによれば、綺麗な肌を保ちたいからという理由が臓器移植の動機の一位である。
 
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手術は無事成功し、ウマソーの身体はポークになった。ポークとは移植に反対する団体がよく使うスラングである。いざという時にはお前の内臓は非常食になるぞという揶揄がこめられている。
生まれ変わった自分の性器を初めて見たウマソーは思わず呟いた。
でけえ。
 
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そんな言葉はウマソーの耳には入らない。今のウマソーには守衛の仕事の何であるかがはっきりと理解出来た。守衛とは何か?その答えは自らの背中が知っている。守衛とは自らが守るべきものを背にして立つ者である。それが守衛なのだ。
 
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レバンナがバスルームを覗いた隙にソファアの裏に隠れていたウマソーは、仮面をベッドの上に置き、種馬成金から強奪した札束を忍ばせてそっと部屋を抜け出した。途中で見つかったらどうしていただろう。いや、本当にどうしていたただろう。ウマソーは今更ながらに興奮して、思わず走り出した。全力失踪。遠い昔を思い出す。中学の同級生を追いかけまわしたあの日々を。

 
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ウマソーは男性ではなくなった。かと言って女性になったわけではない。彼は性を失い、そして、シンプルな人間という定義だけが残った。それはまるで自分がロボットかアンドロイドになったかのような感覚だった。

 
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でも、あれですよね。アミラは如何にも腑に落ちないという顔で訪ねる。あれでしょ?移植すればまた汚染の数値は下がるんじゃないんですか?

アラハカンさん、クローン豚は医療用ですからね。外には持ち出せないんですよ。

 
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誰が何時逝くかは神にしかわからんよ。いつかは自分もって思っていればいいのさ。
冗談じゃない、と若い連中は顔をしかめる。こんなところ早く辞めたいという声も上がる。
まあ、そう怖がるなよ。長老が言う。考えてもみろ。人間が死ぬ確率は何パーセントだい?
そう問われて、みんな一瞬考え込んでしまう。長老は噴き出す。
ブハハッツ。百パーセントさ。

 

 

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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
*良きインプットが良きアウトプットを作る。

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