ハワイに来てからサムスンやギャラクシーブランドの強さを実感する日々。逆に日本のメーカーの商品は、日本にいたときから想像していた以上にその存在感が薄いのが現状。僕がロスに住んでいた25年前からは想像ができなかった完全なる逆転現象がいまここハワイだけでなく世界中で起こっているのであろう。新卒でメーカーに就職し、社会人のいろはを教えてもらった恩義があるので、日本のメーカーにはどうにかして立ち直ってほしいと願う。
まだ記憶に新しい韓国のIMF危機から世界ブランドへの華麗なる飛躍。一体なにがこの逆転劇を可能にしたのか?ずっと疑問に思っていたことをこの本が紐解いてくれた。
以下気になったメモ:
・とにかく大事なのは「先頭を走ること」に尽きる。二番目ではダメなのです。日本では「石橋を叩いて渡る」慎重さが尊ばれる風潮がありますが、韓国では逆です。頑丈な石橋であれば、渡ろうとはしません。それを渡ったとしても、あとから二番手、三番手が追随してくるからです。石橋ではなく、木材が腐っているような橋なら渡ります。それを最初に渡り、振り返った時にもまだ橋が崩れ落ちていなかったなら、叩き毀して、誰かが追随してくることもできないようにします。そういう考え方をしなければ、グローバルな戦いで勝者になることはできません。
・サムスンは世界各地で携帯電話のシェアを広げてきましたが、その際には「地域ごとに事細かく分けて考える商品開発」を行なっています。さまざまな面で進化していった日本の携帯電話を見てみれば、一般の人、とくに新興国の人にはまず使われないような機能も多くなっています。そうした機能は、使わない人にとってはムダなものでしかありません。そこでサムスンでは、どの地域ではどういう機能が求められ、どの地域ではどういう機能が必要ないかを綿密に調査していきました。
・アフリカでは、さまざまな機能どころかメールも必要ありません。LG電子が売り出した商品ですが、イスラム圏の国向けの携帯電話に、メッカの方位を示す機能を付けたものは「メッカホン」と呼ばれて大ヒットしました。
・サムスンでは「見える化」と「見せる化」を分けて提示していくシステムづくりを進めました。日本ではいまようやく「見える化」を進め始めたようですが、「見せる化」はまったくできていないといえるでしょう。
・日本のメーカーは、世界のどこに出しても恥ずかしくない「日本品質」にこだわりますが、品質というのはお客さんそれぞれが判断することです。日本品質にこだわるよりも、お客さんに合わせて臨機応変な製品ラインナップを考えるほうがはるかに重要です。
・例えば、百円ショップで売られている商品の中には、2、3ヶ月で壊れてしまうような商品もあります。しかし、百円ショップの人に話しを聞いてみれば、そういうことに関しては「クレームはまったくない」というのです。それはつまり、客側としても、その品質が百円の商品としては適正なものだと判断しているからです。
・先進国のアメリカでも、サムスン製品のシャアは高く、品質に関するクレームが殺到するといった状況はまったく見られません。そのことからも、日本のメーカーがこだわる品質は、消費者の求めるレベルをはるかに超えているものになっているのだということがわかります。
・世界各地に散る「地域専門家」
グローバル化を推進し、世界各地のニーズをしっかりと把握するために目を見張るほどの活躍をしているのが「地域専門家」と呼ばれる人材です。彼らは派遣先の国に焼く6ヶ月から1年間滞在します。その期間中は何の任務も持たずに普通に暮らしています。それによって、その国の現実を掴み、習慣などを身に付けていきます。そして本格的な活動に入れば、各地の情報をキャッチアップして、戦略的マーケティングを考えていきます。その時点で彼らは、自分が担当している国の文化について、その国に住んでいる人たちと変わらないほど、あるいはそれ以上に深く精通しています。そして、地域的ニーズにあった製品を企画していくこととなるのです。こうした地域専門家が世界中に散らばり、現在までに約4000人いたのですから、その取り組みがどれだけの規模の大きなものなのかがわかると思います。・「デカップリングポイント」という経済用語があります。これは、あらかじめ生産を進めておく部分と、顧客の注文に合わせて対応する部分を分ける「切り離しポイント」のことを示しています。この設定がうまくいけば在庫リスクは低くなり、迅速で効率的な生産が可能になります。立ち食いそばのやり方もそれに似ています。一般のそば屋の利益率は三割以下なのに対し、立ち食いそば屋は七割ほどにもなるといいます。
・いま、もう一度、ものづくりの本質を見つめ直し、情熱と愛情を注いでいくことが殻を破るエネルギーになるのです。
「卵の殻を自ら割れば、生命を持った鳥になるが、他人が割れば目玉焼きにしかならない」
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