Book LOG | 百田尚樹の「風の中のマリア」

 

風の中のマリア

 

百田尚樹の「風の中のマリア」を読みました。

 

まったく内容を知らないまま読んだら、そのオオスズメバチの視点で描かれたドラマチックなドラマチックなストーリーにびっくり。
いままで考えてこなかった新しい視点の体験となりました。

 

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

「あなたはもうすぐサナギになるわ」
「私もそう思う。少し前から体の中がむずむずするから」
「サナギになったら、しばらくの間、眠りにつくのよ。そしてサナギからかえった時には、私のような体になっている」
幼虫はうなずいた。

 
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アゲハチョウはマリアなど眼中にないように、草原の上を自由に飛んでいた。気楽なもんだわとマリアは思った。私を見ても恐れないのだから。

 
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「大丈夫です。ぼくは運がいいんですよ。成虫になれたことがそれを証明しています。同じ卵からかえった兄弟のほとんどは成虫にはなれませんでした。成虫になれるのは百匹に一匹、いやそれよりも少ないかもしれません。ぼくがいかに運の強い虫かわかるでしょう」
「そうね」
ミドリシジミは洞の上で嬉しそうに舞うように飛んだ。その時、彼の翅が洞の上にあったクモの巣にひっかかった。ミドリシジミは悲鳴を上げて暴れたが、翅はクモの糸から離れなかった。
すぐにクモがミドリシジミに近づき、その体に糸を吹きかけた。クモは小さなゴミグモだった。
「ああ、何ということだ」
体の自由を失ったミドリシジミは悲しげな声をだした。「こんなことで命を失うとはー」

 
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飲み干した途端、口の中のとろけるような甘さとともに、体に活力が生まれてくるのを感じた。幼虫の出す甘露がこんなにも素晴らしい飲み物だとは知らなかった。マリアは自分も幼虫時代に姉たちがこうして栄養を補給していたことを知り、誇りに思った。

 
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オオスズメバチのワーカーは卵からかえって羽化するまで約三十日かかるが、その間に死ぬことはほとんどない。安全な巣の中で成虫たちに守られ、豊富なエサを与えられているあらだ。

 
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「たった一日で死ぬの?」
「カゲロウの成虫には口もない。だから何も食べられない。交尾するのには口は不要だからね」

 
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「あたしたちアリもあんたたちスズメバチも、巣全体で一つの生き物なんだよ」

 
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マリアは巣箱のしたのミツバチの屍の山を見た。中にはまだ瀕死の状態で肢を動かしているものもいる。しかしまもなく死ぬだろう。戦いは一方的だった。わずか十頭のオオスズメバチが二時間たらずで三万を超えるミツバチを虐殺したのだ。マリアたちが払った犠牲は一頭だけだった。

 

 

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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
*良きインプットが良きアウトプットを作る。

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