クリエイティブ・マネージメント―「デザイン」を広げるプロデュース術

クリエイティブ・マネージメント―「デザイン」を広げるプロデュース術を読みました。

本書は、クリエイティブの「プロデューサー」にフォーカスした一冊です。日本をリードする7社のクリエイティブブティックの現場を支えるプロデューサー達のリアルなコトバが豊富に含まれていました。こうやって見てみると、カイカイキキの笠原ちあきさんの言葉はとっても分かりやすくて、「世界で戦うアスリートの変化にいかに気がつくか」ということに尽きるのだと思いました。こいった観点で支えてくれるパートが近くにいるということは実に羨ましい。

メモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバです。

クリエイティブなビジネスをマネージメント、プロデュースするということ。

それは、クリエイターによってものが生み出される現場に立会い、ベストなかたちで世に送り出す道筋をつけ、ゴールまで導いていく「力」そのものである。彼らは、クリエイターのように目に見える何かをつくっているわけではない。目にみえないエネルギーで、作品の一部を担っている。プロジェクトのゴールを見定め、そこに向けてスケジュールを管理し、スタッフが働きやすい環境を整え、問題点を見つけ、解決にあたる。ミクロとマクロの視点を同時に持ちながら、クリエイティブを牽引しているのだ。

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左脳的働きでデザインの可能性を広げる good design company 水野由紀子

gdcのプロデューサーは単なるマネージメント的立場ではなく、クリエイティブ自体にも積極的に介入しているのが大きな特徴だ。
「普段からプロデューサーは、デザイナーやクリエイターの”フォロー”役という立場ではなく、プロデューサー自身も完全に”クリエイターの一人”という意識で振る舞い、考え、仕事をしています」と由紀子氏。

「水野は常々”アートディレクターとは、経営者の右脳である”と言っています。優秀な経営者の方は、右脳的なことも実はやれたりするのでしょうけど、左脳的な部分(経営や数字のこと)だけでも大変なのに、右脳部分までを全て一人でやるのは非常に大変。そこでアートディレクターが右脳部分を専門に引き受け、二人三脚でブランドを構築していくべきである。また、クライアントからいわれたものだけをつくるのではなく、求められている以上のものを提案したいというのが水野の考え方です。」

組織図にいえば、水野氏、その下にプロデューサー、さらにその下にデザイナーがいるという図式だ。
「デザイナーがプロデューサーの下、という意味ではないのですがアートディレクターとプロデューサーがチーム。プロデューサーとデザイナーがチーム、という意識で仕事を進めています。もちろん、アートディレクターとデザイナーとの距離が遠い、という意味ではありません。社内打ち合わせでは必ず3者で話をしますが、そこに至るまでの進行はプロデューサーが潤滑油となって進めています」

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クリエイターの権利を守る GRAPH 鶴見樹里

GRAPHには、ほかのデザイン事務所におそらくあまり見られないであろう知的財産権(以下、知材)管理部門という部署が存在する。
「この部署は、CIやロゴマークなどデザインしたものが世の中に出た時に、クライアントのビジネスツールとして最大限活用できるかどうか知財面から見ていくセクションです。クリエイターがデザイン作業に入る前に、クライアントが考えているブランド名や商品名に法的視点で問題があれば、その解決策をこちらから提案させていただく場合もあります」

アパレルの分野において商標登録を取らずにロゴをつくってしまえば、類似品が出回るケースが容易に考えられる。”color”に込められたコンセプトを活かしたまま登録できる方法はないものか、三者でブレインストーミングを重ねていき、ある結論にたどりついた。
「”color”の頭文字 ”c”を”k”にしてはどうかと提案しました。”k”にすれば読み方は希望通り”カラー”のまま、表記のみ”kolor”にすれば造語なんおで識別性のある文字になり、商標権か得られる可能性がでてくるという発想です」

著作権は本来、文化の発展のためにつくられたものです。そしてクリエイターは自分たちがつくったデザインに著作権があるのかどうか、把握しておくことは必要なことだと思います。

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クライアントとゴールを共有するために SAMURAI 佐藤悦子

サムライがロゴマークのみの依頼を受けていないのは、ロゴマークは単に形をデザインするだけのものではないと考えているためだ。ロゴマークとは、企業や団体のあるべき姿をビジュアル化したものであり、その具体的な形をつくり上げるまでには、クライアントと議論を重ねてゴールイメージを共有していく必要がある。さらに、出てきた課題をクリアにしていき、実際にゴールに向かっての施策を重ねながら、その活動や理念の最終的なアウトプットとしてのロゴマークに仕上げていくのだ。

サムライの仕事は、クライアントと真のパートナーとなり、「結果に対しても誠実に向き合う」というスタイルで行なう。クライアントがクリエイティブの必要性を感じ、サムライの考え方に共感してもらえるのかどうかを悦子氏は丁寧に見極めていくのだ。

通常サムライに仕事の依頼があった場合、まず悦子氏が窓口となる。一人でクライアントに会い、サムライが引き受けるべき仕事であるかどうかを見極めるのだ。このプロジェクトの内容や納期、予算、クライアント側の体制などの諸条件。さらに、先方が考えているビジョンなどを理解し、それに対してサムライがお手伝いできることがあるのかどうかを慎重に見極めていきます。

「多くの方は、デザインされた表面的な形だけを見て、”売れる形”や”ヒットする形”を求めます。でも、それは最終的なアウトプットの一つであり、重要なのはそこに至るまでのプロセス。それがいかに長い道のりでも、大きい比率を占めているかきちんと理解していただくことも重要なポイントです」

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世界で戦うクリエイティブに添うマネージメント カイカイキキ 笠原ちあき

「村上は若いアーチストの養成をアスリートに例えますが、村上自身は、テニスならウィンブルドン、ゴルフならマスターズの優勝争いをつねにしているようなトップアスリートなんです、。なので、”集中する” “リラックする” “ミーティングする” そんなアーティストの変化にこちらもきちんと対応し続けないと、アーティストの活動のバランスを崩してしまいます。マネージメントにも独自のコツが必要なんです」
が、村上氏の求めるクオリティにスタッフがすんなりついていけるわけでもないという。ゆえに、村上氏は外部から見ると異常とも思えるほどのマイクロマネージメントを行い、日々苛立ち、叱咤しながらスタッフ全員を引っ張っているそうだ。
「村上は、全責任を負って表舞台に立ち続けています。”自分は猿回しの猿として踊っている”と言うことがありますが、これは自嘲的な言葉ではなく、目先の見栄やプライドは捨てて、踊るべき時には踊ってやるという、覚悟を持った言葉なんです。そういった姿が日本では誤解されて見える部分もあるのですが、彼が見ているのは未来への革命であり、そのために自分が何をやるべきなのかがブレなく分かっているんです」

業務は原則的に全て村上氏の判断を経て進行するのだが、村上氏へのプレゼンルールも徹底されているという。「ビジュアル付きシート」の作成をしなければならないのだ。
「展示のパターンなどはもちろんですが、村上が判断・確認する項目は全てビジュアルで表現していなければなりません。文字もPCの打ち文字ではなく、手書きでなければいけない。うまい下手は関係なくて、相手にわかりやすく伝える努力をしているか、村上はその人の姿勢を見ているようです。口頭で補足説明しなければいけないようなレベルでは駄目で、とにかく見ただけで全てが理解できるように考えて工夫してつくらなくてはならないんです。

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