Book LOG | 阿刀田高の「こんな話をきいた」

 

阿刀田高の「こんな話をきいた」

 

18話の短編からなる一冊。

すべての話が「こんな話をきいた」の出だしからはじまり、「小話」→「本編」へと移っていく構成

ショートストーリーづくりの勉強になる一冊。

 

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

「そうなんです。それが晩年のつもり貯金だったんでしょうね。貯金したつもりで、どんどん使っていらした。その”つもり”をご自身で納得するために、アメリカにいらっしゃる甥御さんに毎年報告していらしたんでしょうね。私も亡くなられる少し前に感づいていたことでしたけど…」
「そうだったんですか…」
確かに。これもまた、もう一つのつもり貯金であることは・・・異を挟めない。おそらく弁護士の報告に間違いはあるまい。

 
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驚いたのは服装のほうではなく、彼女自身の美しさのほうだ。まちがいのない美少女…。不思議に思ったのは、
ー こんなにきれいな子が身近にいるんだ ー
という発見であり、それを追うようにして、
ー みんなきづいてないのかなあ ー
という疑問が込みあげてきたからだ。

 
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当然のことだ。迷ったこと自体が恥ずかしい。とはいえ誘惑の匂いはとてもかぐわしい。このままポケットに収めても露見の可能性は小さいだろうけれど、いつまでも心が痛むのは決定だ。脇腹の痛みは二三日のうちに消えるだろうけれど、心の痛みはいつまでも消えない。

 
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「(死後の世界は)どこかにあるわ。あのネ、世界中にいろんな民族がいるけど、どの民族もみんな宗教を持っているでしょ。宗教はかならず死後の世界こと、言うじゃない。とても偶然とは思えない。人間は直感的にそれを感じ取ったのね。長い歴史の中で、いろいろと…。実際、この世とはべつな世界をかいま見た人はたくさんいるし、報告もされているわ。あるのよ、絶対に」

 
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「まあ、そうよねえ」
姉の夫も、よくわからないけれど、多分普通のほうだろう。このテーマはこのあたりで終わった。あとはティを二ははいも三ばいも淹れ替え、かき餅をつまみながら、愚にもつかない世間話を交わす。ケーキ造りの失敗、生命保険のよしあし、あき巣狙いの噂、左ききの経済的損失…そのうちにどうしたはずみか、
「この前、夜道を歩いていたら」
と、侑子が思い出して呟いた。

 
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リーダーたちがヒクヒクと弱っているときに歴史が編まれることはない。昇り調子になったとき、さらに勢いをつけるために歴史が編集され、上梓される。地方史としても例外ではない。地方行政がまともになったところで編集の予算が組まれ、いろいろとひどい時期もあったが、いまはこんな状態で展望は明るいと、そういうモチーフで綴られていく。つまり戦後の四、五十年が大切なのである。

 
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いったん話題がほかのことに移っても途切れてもまたもとに戻るのが二人の会話の特徴だ。子どものときから、いろいろなことを、それぞれが勝手に言いだし、それでいながら会話が成立していた…そんな習慣が今でも残っているらしい。

 

 

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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
*良きインプットが良きアウトプットを作る。

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