Book LOG | 西村淳の「面白南極料理人」

 

面白南極料理人

 

ウィルスさえ生存されない地の果て、南極ドーム基地にて、第38次列島隊の料理人を務める西村隊員の日記。

独特のやんちゃな綴り方が面白い。

 

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

今回の調達作業で最初の関門は「野菜」だった。書店に行って「無限に続く冷凍庫の中を旅して大丈夫な冷凍野菜」という本を探したが、ない・・・あるわけがない!!

 
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南極観測隊と自称してすぐに信じてくれるのは、「紅白歌合戦」の電報だけのようだ。しかしここで引き下がってはと、あちこち電話をかけまくり、そのうち大日本冷凍牛乳研究所なんてところに突き当たり、見事解決法を見いだした。と書きたいところだが実際は、電話してもけんもほろろに扱われ、結構精神的に引いてしまった。「この問題は先送り!!」と生来の「いやなことは避けて通る性格」が台頭。午後いっぱいは頭の隅っこに引っかかっていたが、夜になって居酒屋で冷たいビールを一口飲んだ途端、きれいさっぱり忘れてしまった。

 
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外に出て、まだ野ざらし状態の食料ぞりの中を引っかき回し、日本から大事に大事に運んできた、肉販売では国内でも超一流、宮内庁御用達の「中央家畜」から仕入れてきた「米澤牛」の塊10kg余りをドーンと使うことにした。解凍して掃除をすると六〜七kgに減ってしまうが、それでもかのブランド品「米沢牛」一人約1kgである。日本で食えば目ん玉の飛び出るどころか、驚愕の余り身体中の穴という開いてしまって、ケツの穴から腸が下に落ちてしまうくらいの法外な料金を請求される超高級肉をごっそりと出したのに、担任諸氏、感動しないのだ。

 
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確かに最初はプラン通り、糸鋸でシコシコ切れ目を入れていったが、寒さのためアッという間に刃が折れてしまう。ノコでこんこん入れていこうと思っても、残りの部材を見ると、作業開始と同時にめんどくさくなった。
以下理由を箇条書きにすると、
・マイナス60度の中で少しでも能率的に
・糸鋸の刃の節約
・ここには建築基準法がない
・1年待てばよい
・少しくらいゆがんでも土台の星のせいにできる
・俺たちはプロの大工ではない
・チェーンソーで作業をした方がいかにも仕事をしているように見える

 
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ただでさえ普通の炊飯は不可能なところに持ってきて、そのまま作れば俗にいうめっこ飯になること必至。「蓋なしで飯炊けってかー」の一声で却下しようと思ったが、「不可能なことを可能にする料理人」のプライドと、ドクターの瞳に浮かんだ少女漫画の主人公のような星の光にこころが動きトライすることにした。

 
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こういうチームはえてして、プロフェッショナルが揃っていることが多い。「あまり舐めてはこっちがやられる」と人生の裏街道をたっぷり見てきた性格のひねているおじさんは、やや伸びかけたパンツのゴムをちょっとだけ締め直した。

 

 

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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
*良きインプットが良きアウトプットを作る。

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