池澤夏樹の「南の島のティオ」

池澤夏樹の「南の島のティオ」 (文春文庫)を読む。

池澤夏樹の「カイマナヒラの家」過去記事)が好きな人にはぜひこの作品も読んでもらいたい。素晴らしい一冊。

ドキュメンタリータッチの「クジラが見る夢」過去記事)も好きだし、「憲法なんて知らないよ」の翻訳的書籍も勉強になるのだけど、やっぱり「カイマナヒラの家」「南の島のティオ」 の世界観が好きだ。

「南の島のティオ」 は少年の読者に向けて書かれている。南の島に住む少年ティオの一人称で描かれていて、読者はティオの純粋な感性を通じて、島に訪れる人々と接する形となる。本来、読者の自分は、島の外の人間なのにも関わらず、ティオの目を通じて俯瞰して見る事ができる。

構成としては以下の通り。

・絵はがき屋さん
 ティオとお父さんと経営するホテルの関係が明らかにされる。
 夢のような不思議な話しから入り、小説全体のトンマナを構成する。

・草色の空の水路
 何でも自分たちで作業してしまう父を中心とした島の大人達。
 現代の便利な技術と島の神々の関係に触れる。
 「エミリオの出発」のカヌーの話の伏線にもなっている。

・空いっぱいの大きな絵
 突然消えたリランの話。「星が透けて見える大きな身体」の伏線。
 「カイマナヒラ」のロビンが語るドライレイク話に似ている。

・十字路に埋めた宝物
 島にできた舗装動労と野球の記憶の繋がり。
 バムさんのお金の使い道。(島の大人と子供の素敵な関係)

・昔、天を支えていた木 
 芸術家アサコさんと木を管理するヘーハチローさん。
 ティオの父が島の外の人の窓口。ティオはサポート役。

・地球に引っぱられた男
 意地悪金持ちヘルナンデスさんと予知するカマイ婆さん。
 カマイ婆さんの登場は、伏線。
 「カイマナヒラ」のロビンが語る飛行機の話を思い出す。

・帰りたくなった二人
 島にハマった二人を助けるティオ。
 戻ってこない程ハマるということ。

・ホセさんの尋ね人
 戦後分かれた恋人たちの話し。
 ティオ(子共)の目線で、紐解く。

・星が透けて見える大きな身体
 アコちゃんの病をカマイ婆さんの協力を得て神から取り戻す。
 この話に向けて様々な伏線が引かれているの。

・エミリオの出発
 他の島からきた、自分で生き延びることのできる同年代の少年。
 昔ながらの手法でカヌーをつくって自分の島に戻る。

・あとがき、あるいはティオの挨拶
 ティオの言葉で締めくくられる。
 池澤夏樹もこの島に訪れた一人としての設定。

池澤夏樹の「南の島のティオ」 (文春文庫)

BOOK LOG一覧はこちら

コメント

タイトルとURLをコピーしました