コルビー・ロードスキー 訳:金原瑞人の「ルームルーム」を読みました。
児童書の研究として手にしました。
最愛の母親を亡くして、新しい家に引き取られていく子どもの視点が、(読み手の子どもたちにも理解できるように)実に上手く描かれています。
ここに「巧みさ」は必要ないのだろう。
子どもならではのぐじゃぐじゃの言葉にならない心境を、「丁寧」に「我慢強く」描写することが大事なのだとあらためて思いました。
以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。
覚えてる、アルシーア?あのとき、いったのよ。あたしの腕をつかんで、ふいに、信じられないくらい力強い口調で。
「アン・オリビア・ライアンズ、どんなことがあっても、あなたは生きていくのよ。それを絶対に忘れないで」
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どうして、いっといてくれなかったの。いう機会なんて、いくらでもあったじゃない。たとえば、看護婦さんが初めてうちにきて、部屋をこそこそ歩き回りながら、小さな紙コップに入った薬や、ぐちょぐちょの病人食をアルシーアに運んでたときとか。あたしをベッドにすわらせて、まじめくさった顔をして、いえばよかったじゃない。
「いいこと、リビィ。もしわたしの身になにかあったら、あなたは、わたしにとってあらゆる面で最高の友だちと暮らすのよ。すっごごくすてきで、めちゃくちゃおもしろい人、ジェシー・バーンっていうの」
たいした手間じゃないわ。それくらい、いえたはずじゃない。
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次はベッドの横のテーブル。アルシーア、まえにあたしにいったこと、覚えてる?その人がどんな人か本当に知るには、ベッドの横に置いている本をみればいい、って。ここにあったのは、ミステリーが二冊、貝の本、辞書、「アンティーク」っていう雑誌。でも、その下にまだ二冊かくれていた。大きくてぶあつくて、やたらたくさん、しおりの紙がはさまっている。「養子とのよい関係」と「思春期まぢかの子どもを引きとるときの心得」。
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「リビィのママ」
「死んだの」あたしは答えた。ねえアルシーア、たぶん、こんなふうにストレートに口に出したのは、これが初めてだったの。このことをしらない人に対して、ってことよ。
どんな感じがしたか、わかる?心のどこかでは、どんどん話しちゃいたいって感じてた。アルシーアが死んでもう何年もたったような気がするときもあれば、アルシーアがいままた死にかけているような気がするときもある、って。でも、「死んだの」としかいえなかった。
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ルーの話をきいてたら、頭のなかがぐるぐる回ってきた。返事をしようとしたときにはもう、ルーはしゃべりはじめていた。
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「わかるよ、リビィの気持ち。あたしも、ママがうちを出てシカゴにいっちゃったとき・・・」
「ううん、わかるわけない。ぜんぜんちがう」あたしはいった。声がいきなりひっくりかえった。「アルシーアはとびきりすてきなママだった。いつもふたりで、楽しいことをすごくいっぱいしたし、それにだいいち、アルシーアは出て行ったんじゃないわ。死んだのよ」
あたしはちょっと言葉を切った。この数週間ずっと感じていた怒りがこみあげてくるのを、ぐっとおさえた。アルシーア、どうして死んじゃったのよ!あたしを残してどうして死んじゃったのよ。
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でも、ちゃんと車をおりた。大部分は、アルシーアのせいよ。アルシーアが後ろから押しているのを感じたし、「リビィ、しっかり」って、耳元でささやいているのが聞こえた気がしたんだもの。あたしがおじけづいているときに、よくいってくれたでしょ。
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「ああ、そういうことか。そのときは、ちょっとゆずって、心のなかに新しい人のためのスペースを作る。自分の生活に新しい人が入ってきたら、だれでもそうする。逆のときも同じだ。だれかがいなくなったら、空いたスペースを埋めなきゃならない。それは、もう知ってるだろ」
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あたしは箱を開けて、ピアスをひとるずつ出して耳のところにあてながら、鏡の前に立って、このピアスをした自分の姿を想像してみた。でも、魚がぶらさがってるのも、輪っかのも、ピーズのも、三角のも、アルシーアがしてたときみたいに、ゆらゆら楽しそうにゆれなかった。ぜんぜん、ゆれなかった。
あたしはベッドに入って、ピアスの箱をまくらの下に入れて、エビみたいに丸くなった。それから、泣いた。めそめそ、ひっくひっく、えんえん泣いた。となりにきたマックスの毛がぐしょぐしょになった。
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「この人、あたしのママじゃない!」あたしは叫んだ。あたしの言葉がガラスではねかえって、ショッピングモールじゅうにひびきわたった。
「どうしてみんな、この人のことをあたしのママだって思うの。ちがうのに。でも、これは正真正銘のあたしのママのピアスなの。これがだめだっていうんなら、一生ピアスなんかしない」
あたしは魚のピアスをつかんで、ポケットにつっこんだ。
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「だって、スージーとノアからきいたの。あたしの部屋はもとはルーム(機を織る)・ルーム(部屋)で、あたしがくるから機を<くるり屋>の地下に置いたんでしょう。で、火事になって、機が焼けちゃって。ってことはあたしのせいで・・・」
あたしは立ちあがって手すりのところにいって、外をながめた。木も草もバーニーや郵便屋さんまでも、かすんでいた。涙がぼろぼろこぼれた。
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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
*良きインプットが良きアウトプットを作る。
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