川村元気「四月になれば彼女は」

 

2018年のベストセラーから今年の10発目! 10/52

川村元気の「四月になれば彼女は」を読みました。

初版発行は、2016年11月とちょっと前ですが、気になったので手にしました。

ヒットメーカの川村元気さんは、それこそ最近では、『君の名は。』の企画・プロデュースが有名ですが、過去にも、様々なヒットを飛ばしている方なんです。
映画『電車男』『デトロイト・メタル・シティ』『モテキ』などを企画・プロデュースし、小説化としては、『世界から猫が消えたなら』で作家デビュー。その後に『億男』を発表し、今回の「四月になれば彼女は」が3作目だそうです。

川村さんの恋愛小説を今回はじめてじっくり読んだのですが、シーンの切り取り方と、場面転換がとても映像的だと思いました。

僕は、岩井俊二さんの小説も彼の映像と同様好きでたくさん読むのですが、川村さんの「四月になれば彼女は」にも同じ匂いを感じました。
表現方法は全くちがうのだけど、二人に共通する独特のなんというのか、活字から「映像で表現されたい感」がでているのです。
わかりにくいですかね?

でも、これにはちょっと驚きました。
活字からビジュアルが簡単に浮かんでくるんですね。
さすがだと思いました。

もう一つ、面白いと思ったのは、とあるキャラクターが言った印象的なセリフを別のキャラクターが引用して繰り返すことで、ストーリーの中で事実として根付かせていくような手法が2回ほど使われていたのですが、これがとても効果的なんですよね。
細かいですが、これまた新鮮な演出でした。

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。
とはいえ、興味がわいた人は、ぜひ手に取って読んでくださいね。

 

 

ハルの顔が歪んだ。とても苦しそうに見えた。藤代はただその横顔を見つめていた。高層ビルの上空を飛ぶヘリコプターの音が遠まきに響いてくる。あれだけ騒がしかった渋谷の街が、彼女のために静かにしているような気がした。

ーーー

フォーカスが合っていない横顔。銀色の光が射しこむ電車のなかで、ドアの横に立ち、顔をくしゃくしゃにして笑っている。子供が歌っているようにも見える。いつのまに撮られたのだろうか。動揺し、鼓動の音が耳元に迫る。それは見たことがない、自分の笑顔だった。

ーーー

今思うと、友人に完全にしてやられたのだ。もともと子猫たちは、四人の引き取り手がついていて、藤代たちはあらかじめ最後に残った子猫と出会うことが定められていた。
なぜ彼が選ばれなかったのか。理由は単純だった。とにかく人みしりで、懐かない、はじめは抱かれることすら許さない子猫だった。けれども映画を見ているときだけはそばにやってきて、膝の上に乗った。人みしりで映画好きなこの子猫に、藤代は「ウディ・アレン」という名前をつけることを提案し、弥生は笑いながら賛同した。

ーーー

藤代はハルにとって、はじめての恋人となった。
その日から彼女は大好きなコーヒーが飲めなくなった。ぱたりと、突然飲めなくなった。見た目も、味も、すべて受け付けなくなってしまった。
「誰かを好きになると、好きなものをひとつ失うんですか?」

ーーー

ぜんぶ諦めてしまえば、時間の方が俺に合わせてくれるようになる。

ーーー

「誰かのことを心から愛している、と思えるのは一瞬だしね」
右手にハルの震える小さな手を感じて、手のひらを見つめる。あのとき、自分の手も震えていたことを覚えていなかった。

ーーー

「ほんとうに。でもあr、もともとキューブリックが撮る予定だったんだ」
「キューブリック?」
「ほら、『2001年宇宙の旅』の監督」
「へえ」
「キューブリックがつけていたタイトル知ってる?」
「なに?」
「ピノキオ。別に人工知能ってあたらしいアイデアでなくても、昔から同じような話を繰り返してきているだけなんだよ」

ーーー

「どうしてだろう。いま考えると、滞在を延ばすこともできました。でもあの頃の僕らは、いつでもまた来ることができると信じていた。いつでもこの恋愛が続くと、確信していたんです。なんの保証もないのに」

ーーー

「相変わらず厳しいねえ……そうじゃない人もいると思うけど」
「ほとんどの人の目標は愛されることであって、自分から愛すことではないんですよ」
「それは確かに」藤代は苦笑して続ける。「否定できない」
「それに、相手の気持ちにちょっとでも欠けているところがあると、愛情が足りない証拠だと思い込む。男性も女性も、自分の優しい行動や異性に気に入られたいという願望を、本物の愛と近藤しているんです」

ーーー

「生きているという実感は死に近くことによってハッキリしてくる。この絶対的な矛盾が日常のなかでカタチになったのが恋の正体だとボクは思う。人間は恋愛感情のなかで束の間、いま生きていると感じることができる」

ーーー

腹が痲痺し、嗚咽が漏れた。写真を手にしたまま、うずくまってしまって動けなくなった。いつかまた見に来ようね。ハルの声が耳元に迫る。苦しくて、悔しくて、仕方がなかった。けれども呻くことしかできなかった。酢酸の匂いが、その悲しみの輪郭をぼやけさせてくれるようで、藤代はしばらく暗室から出ることができなかった。

ーーー

「人は死ぬ、けれどもわたしたちのそばにいてくれる」老婆は言った。「わたしたちを生かしてくれている」

 

 

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