田村優之の「青の約束」を読みました。
青春時代を大事にそっと振り返り、これを繊細に描写する演出力が素晴らしい。
そうすることでドラマチックなプロットにリアリティをもたらすことができるのでしょうね。
自分の青い時代が愛おしくなりました。
以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。
学生の頃、年を取っても腹の突き出た中年にだけはなりたくないと思っていた。あの頃に願ったことの中で、本当に実現できているのはこれくらいかもしれないと思うと、つい自嘲的な笑いが浮かぶ。
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ここ数ヶ月、心の底で渦巻いていた疑問を、思い切ってぶつけた。
「・・・有賀、お前、純子のこと、好きなんじゃないか」
有賀が振り向いた。その表情を見て、瞬間、自分の言葉が正しかったことを知った。心の半分が重く固まった。
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怒りや哀しみを長く持続するには、とてつもなく大きなエネルギーがいる。それを保ち続けることの可能な時間が、修一のなかでもはや過ぎ去ってしまいつつあるのかもしれなかった。
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そんな不満が、純子に謝り、引き止めることを躊躇させた。
純子はいつもあまりにも鋭敏だった。かすかな不誠実、澄み切っていないもの、小さな嘘・・・。そうしたことをカナリアのように敏感に嗅ぎ取って、自分自身が傷ついてしまう。そして相手に対しても、腹を立ててしまう。
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これまでの何十年も生きてきた中で自分が行ってきたさまざまな選択。
それぞれの時点で別の選択をしていたなら、自分は今どこにいるのだろう。年齢を重ねるごとに、そうした思いにとらわれることが多くなっている。
自分が開けなかったドアや、曲がらなかった道。
その向こうにはどのような世界があったのかと。
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どれくらいの時間がたったのかわからない。しばらくそのまま修一は動かなかった。頭の芯が白くなり、何も考えられないような気がした。
やがてゆらゆらと立ち上がり、再び手紙の続きを読み始めた。
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総合体育館での試合。お前とよく立ち話をした図書館前の道。
あの頃のことを思い出すと、何かそこらじゅうに光があふれていたような気がする。
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窓の外で、セミがうるさく泣いている。雲が速く流れ、窓から差し込む光が明るくなったり暗くなったりした。
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八月の最後の日曜日、有賀は力尽きた。
空が光るように晴れた日の、午後過ぎだった。
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三年がたった後も、強い日差しを浴びるたび、有賀のことを思い出してしまう。
彼と一緒に過ごした頃、自分も光に包まれていた。
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自分も、有賀も、光に包まれて、笑っている。
涙が出そうになった。
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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
*良きインプットが良きアウトプットを作る。
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