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伊坂幸太郎の「AX」

 

2018年のベストセラーから今年の15発目! 15/52
伊坂幸太郎の「AX」を読みました。

自宅では恐妻に絶対服従の、冴えない文具メーカーの営業の裏の顔は、正義感の強い、フェアさにこだわる、の殺し屋。

迫力満点の描写ターゲットとの死闘が描かれたと思うと、家に帰っては妻を怒らせないように細心の注意を払い、普通では到底思いつかないような些細なことをこれでもかというくらい真面目に描写する。

その、アンバランス感がなんとも違和感の連続であり、全体的にヒューマラスな空気を作っている。

しかし、本の後半にちょうど差し掛かったあたりのとろで、突然この主人公が死ぬことになるには驚いた。しかも、いきなりあっさりと、文章にしてたった二行で死んでしまう。それはこんな感じだ。

その言葉は医師の心を動かした。そしてその結果、兜は八階から落下し、死亡する。

ここからが伊坂幸太郎の腕の見せ所なのだろう。今度は息子の視点も入り混じりながらストーリーが展開されていき、結果的にはなんと、家族愛、そして究極の夫婦愛の話にまとめ上がっていく。なんだか、読み終わって狐につつまれたみたいだった。本屋大賞にノミネートされているのも納得。

かなりネタバレ的になっちゃったけど、以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

かと言って反論すれば、議論の時間が増すだけだ。心の歯車を停止させ、何も考えないままに、「確かに、僕はあまり、息子のことに注意を払っていないかもしれないな」と相手の批判を受け入れるほかない。欠点を認め、反省をし、改善を約束する。それがもっとも、円満に解決する道筋だった。最後には、「自分では、それなりに息子のことに気を配っているつもりだけど、君に指摘されてみると、全然足りなかったんだな、と痛感するよ。君のおかげで、また成長できた」と相手への感謝を、あまりへりくだることなく、伝えるのも重要なポイントと言えた。

ーーー

まったく考えの読めない男だ、と兜はため息を吐きたくなった。二十年以上の付き合いになるが、この医師には、その間に老いた印象がほとんどない。お互いの精神的な距離が近くなった感触もなかった。

ーーー

(妻は)高級な食材を使い、凝った調理方法の料理を教わっているらしいのだが、自宅では一向に披露される気配がなく、ようするに、自分たちがその場で食べるために料理をしているだけ、といった節がある。一度だけ、「我が家では作ってくれないのか」と訊ねたことが。むろん、そのような台詞ではなく、「自分もたべられたら、これにまさるよろこびはないでしょうね。きっと無理でしょうが」といった遠慮気味の言い方で、しかも、空耳ではなかったかしらと相手に勘違いされるほどの、静かな口調だったが、妻は鋭い目つきで兜を睨んだため、それきり料理教室の話はしないことにした。兜の中には、「タブーの箱」とでも呼べるものがあり、妻との会話で話題にしてはならないものを、そこにしまっている。「料理教室」もそこに放り込んだ。

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ビルの向かい側に、ボルダリングジムの看板を見つけた。そこに書かれていた、「この秋、話題騒然のマイナースポーツ!」の言葉に、「話題騒然でもマイナーの壁を破れぬのか」とおかしみを感じ、引き寄せられた。

ーーー

一方が、自尊心を削られても抵抗できなほど、怯えているにもかかわらず、もう一方が、自分たちは安全地帯にいる、と平然としている。珍しい光景ではない。世の仕組み、社会を構築する土台;とも言えるかもしれないが、兜は好きではなかった。フェアさに欠ける。

ーーー

死ぬのは怖くない。だが、死んだら妻が怒るかな、と考えたときだけ少し怖くなった。

 

 

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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
*良きインプットが良きアウトプットを作る。

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*Amazonへのリンク→ 伊坂幸太郎の「AX」

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吉野源三郎の「漫画 君たちはどう生きるか」

 

2018年のベストセラーから今年の9発目! 9/52

先日のBookLOG 263|吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」につづき、今度は、漫画版、吉野源三郎の「漫画 君たちはどう生きるか」を読みました。

 

小説版とは構成が若干異なっています。
漫画版では、小説でのクライマックス部分から入り、これの紐解きを行なっていく構成になっています。
全体を通して、より説明的になっている印象を受けました。

本来のターゲトである子供でもより手に取りやすくなったということですが、実際読んだ我が子に聞いてみると、一番読んでほしいキモとなる「おじさんのNOTE」部分は、がっつりスキップしていたようです。

子供の心情としては、漫画だけ読んで、活字で書かれている「おじさんのNOTE」は付録的なものなので読まなくてもいいでしょ?という印象の様です。これでは本末転等じゃないのかなあ?と (汗)

また、これはあくまでも個人的な感想ですが、やはり、この漫画版であっても、小説版で受けた印象と同じで、「果たしてこの本は、子供向けの本なのだろうか? それとも、子供に教育を施す大人向けの本なのだろうか?」という疑問は依然として拭い去れないままでした。

とはいえ、興味がわいた人は、ぜひ手に取って読んでくださいね。

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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
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村上春樹の「騎士団長殺し」(上)

 

村上春樹の「騎士団長殺し」(上)を読みました。

 

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

しかしその朝、騎士団長殺しを眺めながら、私の頭からはどうしてもユズの顔が去らなかった。あれはどう考えても夢なんかじゃない、と私はあらためて思った。
きっと私はあの夜、本当に」あの部屋を訪れていたのだ。ちょうど雨田具彦が、数日前の真夜中にこのスタジオを訪れたのと同じように、私は現地つの物理的制約を超えて、何らかの方法であの広尾のマンションの部屋を訪れ、実査に彼女の内側に入り、本物の精液をそこに放出したのだった。人は本当に心から何かを望めば、それを成し遂げることができるのだ。私はそう思った。特殊なチャンネルを通して、現実は非現実になり得るのだ。

ーーー

電話のベルが鳴ったのは朝の十時過ぎだった。かけてきたのは雨田政彦だった。
「急な話なんだが」と雨田は言った。「これから伊豆まで父親に会いに行く。よかったら一緒に行かないか?うちの父親に会いたいって、このあいだ言ってただろう?」
明日の午前中にかかってくる電話で、誰かが諸君を何かに誘う。これを断ってはならない。
「うん、大丈夫、行けると思う。連れていってくれ」と私は言った

ーーー

おれはCDみたいなものが好きじゃないんだ。ぴかぴかしすぎているし、軒にするしてカラスを追い払うのにはいいかもしれないが、音楽を聴くためのものじゃない。音がきんきんしているし、ミキシングも不自然だ。A面とB面に分かれていないのも面白くない。カセットの音楽が聴きたくて、それでまだこの車に乗っているんだ。新車にはカセットデッキはついていないものな。

ーーー

カーステレオからはデボラ・ハリーの「フレンチ・キッスイン・イン・ザ・USA」があ流れていた。我々の会話のバックグラウンドにはずいぶん不似合いな音楽だった。

ーーー

「そう。諸君らはここにふたりきりではあらない」と騎士団長が言った。
騎士団長は雨田政彦がさっきまで座っていた布張りの椅子に腰掛けていた。いつもの服装、いつもの髪型、いつもの剣、いつもの身長だった。私は何も言わず、彼の姿をじっと見ていた。

ーーー

「心をしっかりと繋ぎ止めなさい」とドンナ・アンナは言った。「心を勝手に動かせてはだめ。心をふらふらさせたら、二重メタファーの餌食になってします」
「二重メタファーとはなんだ?」と私は尋ねた。
「あなたはすでにそれを知っているはずよ」
「ぼくがそれを知っている?」
「それはあなたの中にいるものだから」とドンナ・アンナが言った。「あなたの中にありながら、あなたにとっての正しい思いをつかまえて、次々に貪り食べてしまうもの、そのようにして肥え太っていくもの。それが二重メタファー。それはあなたの内側にある深い暗闇に、昔からずっと住まっているものなの」

 

 

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*企画は身体性。良質な企画は世の中を変える。
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白石一文の「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」(下)

 

白石一文の「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」(下)を読みました。

 

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

思惟する ー 考えるということはあくまでも設定された目的を完遂するための一手段である。僕たちは「思惟する」という作業を通じて到達すべきなんらかの心理を求めるし、思惟すること自体が、新たな行動を選択するための事前準備でもある。僕たちは、心理それ自体か、心理に基づく行動という終着駅に向かって思惟という汽車で走る。そうやって心理に辿り着いたあかつきには、その駅で新たな目的地を求めてさらに走り出すか、または汽車を降りて、突き止めた究極の心理を味わい、それに基づいて「行為」しなくてはならない。

ーーー

WHOなどによると、現在、世界中で栄養失調に苦しむ子供の数は約1億7800万人。日本の総人口と韓国の総人口をちょうど足したくらいの子供たちが、いま、この瞬間も飢えているんです。
中でも二千万人の子供たちは餓死寸前で、実施、この地球では毎年、5歳以下の子供たち350万人が栄養失調でいのちを落としている。
(中略)
「一話で82万5千ドル。日本円で換算するとと8800万円になります」
「たった30分の出演料が?」
(中略)
つまり、チャーリーのたった30分の出演料だけで2410人の子供が餓死せずに一年間生き延びられるってことです。

ーーー

日本政府の現在の総予算は一般会計と特別会計を合計して年間で210兆円程度ですから、1300億円の出費なんてその1615分の1以下、つまり0.06パーセント程度ってことです。これは海上自衛隊のイージス艦一隻の金額です。日本政府単独でたって毎年1300億円くらいの金はなんとでもなる。だけど、実際には日本政府はその0.06パーセントの支出すらせずに毎年世界中で350万人の子供たちが餓死していくのを黙って見過ごしているわけです。

ーーー

川端さん。この世界なんて一瞬で変えられるんですよ。何も難しく考えることなどありません。明治維新や終戦後の我が国を見てください。世界は音を立てて変貌しました。戦争や技術確信が世界を変えたのですか?そうではありません。この世界を変えたのは政治界であり法律なのです。政治によって法を定め、それを警察力と軍事力いんよって定着させる。それが政治です。国家という真っ白な紙に法という定めを記す鉛筆画我々政治家であり、その紙を国民一人一人の額に貼り付けるための糊が政治権力なのです。

ーーー

日本でも経験したごとく住宅バブルはいつの時代にも起こり得るものだが、今回のアメリカのバブルには「金融工学」という名のマッドサイエンスが用いられた。無価値な証券類はこのサイエンスによって細菌からウィルスへと生まれ変わり、世界中にばら蒔かれたのだ。アメリカは自分たちのやっている詐欺行為が露見し、国家そのものの信用が失われることを恐れて軍事行動を世界中で繰り返してきた。拳の力を見せつけることで国内外の人々の目をごまかすか、または脅迫し続けてきたのだ。
新村の指摘するように、いずれ破綻するアメリカ経済を救うにはほとんど無制限のドル供給、つまり巨額の財政支出が求められる。しかし現在のアメリカの政府にそれは困難だろう。所得格差をこれまでに拡大させてきたスーパーリッチたちは、当分は相応の政治力を発揮できるからだ。結果的にブッシュもブッシュ以降の大統領も限定的な救済策しか採用できない。そうやってバグダッドのアメリカ軍同様に、アメリカは徐々に弱体化していくことになる。そして、決して遠くないある日、世界中の国々がドルを一斉に売り始めるのだ。基軸通貨はこの瞬間に消滅し、世界は混乱を経て新しい秩序の構築へと向かい始める。

ーーー

ヨシダがお前より恵まれているように見えるのは、ただ、お前がヨシダではないからだよ。世の中なんて全部そうだ。どんなに幸福そうに見える人間でも、そいつが本当に幸福かどうかなんて俺たちには永遠に分からないんだ。他人のことを幸福だと思うのは「あなたは客観的な事実として幸福なのですから、そのことに納得し、決して不平不満を述べないようにしてください」と押し付けているのと同じだ。その本人の幸福とは何一つ関わりなんてないんだよ。貧乏人には貧乏人の幸福があるし、金持ちには金持ちの不幸がある。同じように貧乏人にしか手に入れられない幸福もあれば、カネしか買えない幸福もある。要するにそれだけの話だ。

 

 

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白石一文の「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」(上)

 

白石一文の「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」(上)を読みました。

 

以下、僕の中で「引っかかり」のあったコトバのメモを読んで興味がわいた人は、手に取って読んでくださいね。

 

 

企業が大規模な人員整理によって多数の従業員をクビにして社会に放り捨てる。すると証券市場は大リストラを歓迎して、その企業の株価を持ち上げる。企業は業績を回復させ、株主配当は増え、株価の上昇で株主たちの財産はふくらむ。一方、解雇された社員たちは短期間、失業保険を受け取ったのちは生活水準の大幅な切り下げを余儀なくされる。そうやって富めるものはますます富み、貧しいものはますます貧しくなっていく。株主と従業員、この立場の違いによって生まれる格差がこれほど明瞭で不可逆的になってくると、社会の二分化、階層化は避けられなくなっていく。

ーーー

彼女は我が身を鞭打つことで僕からの冷ややかな視線を封じ、ユキヒコの死を丸ごと彼女だけのものにしようと測り、ちゃんと成功した。女のずるさの前で僕たち男はいつだって完璧に無力なのだ。

ーーー

総額百二十五兆ドルに達する世界の「富」の約85パーセントを、世界の成人人口の2パーセントが保有している。アメリカの富の40パーセントは1パーセントのアメリカ人が保有し、日本でも1パーセントの日本人が富の25%を哺乳している。中国などはたった5パーセントの特権階級が95パーセントの富を保有しているといわれている。

ーーー

5年もやっているとさしたる興奮も喜びもない。物事の価値というのは詰まるところ希少性に依拠しているだけなのだろう。どんな輝きも日常化された瞬間に、それは輝きではなくなる。

ーーー

まず最初に自分が行ってきたことを丸ごと認めてあげてください。理由や根拠を求めずに崖から飛び降りるような大胆な気持ちで、自分のこれまでの人生をとにかく肯定するんです。実際、周囲の人間からすればカワバタさんはとても恵まれた人生を送ってきた方なんですから、それほど難しいことではないはずですよ。

 

 

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